住宅支援のきっかけ

きっかけとなった出来事

住宅支援を始めるきっかけは、私自身が過去に無職になったとき、家探しにとても苦労した経験があったからです。
私は大学卒業後、なにも目標がなく、なんとなく不動産会社に就職しました。
そんな気持ちで就職したものですから、やりがいを感じられず1年程度で退職してしまいました。
無職になった私は、妻と生まれたばかりの子供の3人暮らしで、貯金はわずか、保証人がいないというひどい状態で引っ越しすることになったのですが、不動産会社に勤めていた経験があるから、住宅に苦労することはないだろうと楽観的に考えていました。

実際家を探してみると・・・・。

借りられる物件がない!
苦労の末に、条件に近い物件を見つけることができましたが、その時大家さんから出てきた条件が「どうしても入居したいのならば契約時に敷金1ヶ月+賃料6ヶ月分、合計7ヶ月分前払いしてください」というとても厳しいものでした。
他に物件がない以上、選択の余地がありません。
仕方なく当面の生活費のために残しておいた貯金を全部使い果たし、この物件を借りることにしました。

引越し後の後悔と不安

引越し後、やりたい仕事がない私は、当然就職活動はうまくいかず、無収入のため生活費にも困りました。
毎日ただただ不安と焦る気持ちで頭が一杯で、「こんな部屋借りなければよかった、でも他に物件もないし、どうしたら良かったのだろう?」という解決できない問いを繰り返しながら、眠れない夜を過ごした記憶があります。
私は物件選びで失敗したことで、人生の再スタートに失敗してしまいました。
「住宅選びはとても重要だ!」と気づいた時には、すでに遅かったですが・・・。

ピンチはチャンス!?

焦りと不安の中、家のことをずっと考えていた私は、ふと思いました。
札幌市内の空き部屋って結構あるのに、なぜ私には貸してくれないのだろう?
たしかに私は一時的に無職で収入がない。けれどもクレーマーやトラブルを起こす人間ではない。
でもそれを証明することはできないか・・・。
大家さんも不安だから、他の人よりも条件を厳しくしたんだろうな。
それでもお金がない人に賃料の7ヶ月分はひどすぎる。
入居後に転職したり、退職したり、無職になったりする人はいるはずなのに、賃貸条件が変わることはなさそうだ、それに比べ入居時の審査って厳しいすぎるけど、他の人はどうしているのかな?
いや待てよ・・・。
考えてみれば、自分はなんとか家を借りられたけど、そもそも家を借りることができない人もいる。
このとき私は前職時代のことを思い出しました。
そうだ、この問題を解決するために、もう一度不動産業をやろう。
この辛さを知っている自分は、困っている人の力になれるかもしれない!
今度は、明確な目的をもって不動産で仕事をしよう!と決意しました。

問題解決を志したものの・・・。

不動産業界に戻ってはみたのですが、辛い経験を知っているのと、大家さんを説得することとは全く違いました。
大家さんに相談しては断られ、別の方を紹介してくださいと言われる日々が続きました。
思い出せば、現在まで入居に至らないケースが多数ありました。
例えば、下記のようなケース
①健康で元気な高齢者でも単身というだけで入居を拒否されたケース。
②一時的に離職して収入がないので入居できなかったケース。
③生活に支障がないにも関わらず障害者というだけで入居を断られたケース。
④精神病院から退院する男性からお部屋探しの依頼を受けた際は、100件以上問い合わせて、借りられるお部屋は0件という残念な経験。
⑤引越しできず雨漏りする家に住み続ける高齢者など
せっかく相談に来てくれたお客様を断らなければならない度に、自分の過去のつらい経験を思い出し、やるせない気持ちになるばかりでした。
ただただ自分の無力さと問題解決の難しいと実感しました。

こうなったら自分でやるしかない

多くの方に断られていくうちに、不動産業の従業員としてやっているだけでは解決できないことに気が付きました。
多くの大家さんが部屋を貸し出さない理由はとてもシンプル。
その答えは漠然とした不安があるからです。
確かに、入居後に孤独死、賃料滞納、迷惑行為、夜逃げなどが起こると手に負えません。
できることなら、そのようなリスクが低い方に借りてもらうことが健全な賃貸経営のセオリーですから、正当なご意見だと思います。
とはいえ、困っている人は確かにいる。
こうなったら、自分自身で不動産を買って困っている方に貸し出そう。
そして、トラブルがないことを世の中にアピールして、住宅を提供してくれる貸主を増やそう。
私は決心しました。
そんな思い付きから現在までの約9年、私は少しずつ自分自身で物件を買って貸し出すという個人的な活動をはじめました。
これが住宅支援の始まりとなります。

最後は人間関係。

現在、わたしの物件の入居者は、DV被害者・障害者・高齢者・低所得者・大家族・保証人なしの方々がいます。
実際、何度か賃料の滞納がありましたし、連絡がなかなか取れないときもありました。
その他にも近所のトラブルを相談されたことが数回ありましたので、トラブルがゼロではありませんでしたが、結果的に、孤独死、長期間の賃料滞納、迷惑住人や夜逃げなどはほとんどなく、それどころか、お礼を言われたり、お菓子などをいただいくことが何度もありました。
当たり前のことですが、やはり人間同士ですから、貸主側と借主側の人間関係が円滑であればトラブルが起こるケースのほうが少ないように思われます。
少なくとも私が接してきた方々は特に何も問題を起こすことがなく、逆に、まじめで、我慢強く、協力的な方が多かったように思います。
振り返れば、あの苦しかった経験がいまの住宅支援につながりました。
そして、今の入居者の方々に借りてもらえたことを私はとても感謝しています。

個人活動から法人格取得へ

私たちはお部屋探しに困っている方に対しする支援と相談、空き室をお持ちの大家さんに対し情報を提供することで、いつの日か、誰もが住宅に困ることのない社会の実現を目指しています。
約9年前からはじめた住宅支援の個人活動は、2019年5月24日法人格を取得し、NPO法人住宅支援相談センターとして、現在も活動しております。

もう一つの住宅支援

全国で広がる空き家問題解消もまた住宅支援活動の一環。
空き家問題とは、いま全国で空き家が増え、適切な管理がなされることもなく建物が老朽化し、景観上の支障、治安悪化、倒壊や放火など、多くの問題が危惧されている社会問題です。
私のイメージでは、人口減少により、居住者がいなくなるので、空き家が増えるのだと思っていました。
しかし、空き家が増え続ける地域にも、家が見つからないと悩んでいる方々がいるという矛盾を知りました。
これを知ったのは、空き家バンク登録するために人口3,000人程度の町役場を訪れたときのことです。

聞いてびっくり!

私は役場の方に尋ねました。
「この地域は空き家多いようですが、そもそも空き家バンクに登録しても、買い手、借り手は見つかりますか?」
それに対し、役場の担当者はこう答えました。
「空き家も多いのですが、その逆に買いたい人、借りたい人も多くいます。
ただ、すぐに住める家がとても少ないので困っています。
君山さんの物件をリフォームしてくれるならすぐ借り手は見つかります。
買い手が見つかるかどうかは価格設定しだいですね。
なにせ田舎なもので、予算も限られている方が多いものですから。
空き家バンクに登録される物件は、長期間空き家の物が多く、住めるようにリフォームすると予算オーバーしてしまうので買えないし、借りられないんです。
実際、空き家バンクを呼びかけても積極的に登録してくれる住民は多くありませんし、この地域には不動産会社もないので、情報も入ってきません。
君山さんのような方が住宅確保の活動をしてくれるとありがたいですね。
もしも手直しが少なくて住める売り家、貸家があったら教えてください。
買いたい方、借りたい方はいつもいるので。」
え!?そうなんですか?

空き家問題の原因って?

空き家問題の原因の一つとして考えられるのは、人口が少ない地域では、不動産会社を含め、積極的に相談できる団体がない。
だから転居や相続などで一度空き家になってしまうと、誰からも声がかからず、適切に管理されることもない。
結果的に、長期間空き家となった建物は老朽化し、多額のリフォーム費用をかけてまで修理されることは少なく、また、高い費用をかけて解体されることもないため、そのまま放置される空き家が増える。
もしも、わたしたちの活動をとおして、早い段階で空き家の所有に声をかけることができたなら、住宅を提供してくれる人は必ずいるだろう。
これは、住宅支援であり、この社会問題の解消につながるかもしれない。
このとき、あらたな住宅支援のかたちが浮かび上がりました。

最後に

近い将来、日本は、超高齢者社会に突入し、また非正規労働者の増加などが懸念されています。現在、社会的弱者の方々は貸主側の一方的な独断と偏見による審査基準により、住む家が見つからずに困る方々がさらに増加すると考えられます。
また、全国で空き家増加が問題視されている中、その地域では家を探している方々が絶えずいる、という矛盾も見つかりました。
現在、当センターの活動は社会的弱者に対してのみならず、空き家問題解決の糸口として機能する可能性を信じ、住宅供給不足の地域の住宅確保や、相談業務として、空き家をお持ちの方、自宅の処分を考えている方や、相続不動産をお持ちの方、処分に困っている不動産の寄付受付等にまで活動を広げております。
最後に、特定非営利活動住宅支援相談センターは、住宅にお困りの方々の支援と相談、空き家問題対策の総合窓口として、住宅の確保と提供を行い、誰もが住宅について悩むことなく、いきいきとした生活を送ることができる地域福祉の充実に貢献していけるよう日々活動し続けます。

NPO法人住宅支援相談センター

理事長 君山 光史

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